2017/01/22

個人型確定拠出年金(iDeCo)どうする?

スポンサーリンク


1.個人型確定拠出年金ってどんな仕組み?

ざっくり言うと、以下①~④の流れです。拠出額は定額である一方、年金額は運用の成果次第で変動するため、確定給付年金ではなく確定拠出年金と呼ばれています。また、加入するか否かの判断に加え資金の負担も各個人が担うため、企業型確定拠出年金とは区別し、個人型確定拠出年金と呼ばれます。

 ①加入 → ②毎月拠出 → ③投資信託等で運用 → ④60歳~70歳以降に年金として受け取り

ポイントは、以下の図のように運用資産が変動し、運用益が生じる可能性がある一方、運用損失が生じる可能性もあるということです。株に投資するのか債券に投資するのか等、投資判断を各個人が行い、その結果次第で年金額は大きく変わってきます。

(出所:http://www.ideco-guide.jp/)


毎月の拠出可能額には企業年金の有無等により上限があります。

● 自営業者等 68,000円
● 厚生年金保険の被保険者のうち
 ・ 厚生年金基金等の確定給付型の年金を実施している場合 12,000円
 ・ 企業型年金のみを実施している場合 20,000円
 ・ 確定給付型の年金を実施していない場合 23,000円
 ・ 公務員、私学共済制度の加入者 12,000円
● 専業主婦(夫)等 23,000円


2.個人型確定拠出年金のメリットって?

メリットは以下の3点あると言われています。

①拠出額を課税所得から控除可能 (課税所得の減少により所得税と住民税が減税される)
②運用中の運用益が非課税
③年金受け取り時の所得控除

一方、個人型確定拠出年金のデメリットは「資金が60歳まで拘束される」点にあります。

ある程度経済的に余裕があり、すでに投資信託への投資を行っている方にとって、個人型確定拠出年金は節税等のメリットを確実に享受することができる、非常に有利な投資商品と言えます。


3.どの商品に投資すべきか?


個人型確定拠出年金では株式ファンド、債券ファンド、預金などの運用方法があります。
このうち、数十年単位の長期運用では、株式が最も有利と考えています。

以下は1900年から2015年における実質トータルリターン(配当利回り込み、インフレ調整後)の推移です。

正直言って投資に絶対はありません。ただ、超長期運用では、株式は債券や預金より圧倒的に高いリターンを生み出してきました。世界一の超大国であるアメリカは当然として、債券運用に有利な低インフレ国家のスイスも、1945年に一度財政破綻した日本も例外ではありません。これが超長期投資の歴史です。


全世界計 → 株:年率5.0%、債券:年率1.8%、預金:年率0.8%

米国 → 株:年率6.4%、債券:年率2.0%、預金:年率0.8%

スイス → 株:年率4.5%、債券:年率2.4%、預金:年率0.8%

日本 → 株:年率4.2%、債券:年率-0.9%、預金:年率-1.9%

(出所:Credit Suisse Research Institute)
(http://publications.credit-suisse.com/tasks/render/file/index.cfm?fileid=41C8D99B-F01F-0510-9BC5389C682E94D5)


株式に投資するファンドには、大きく、アクティブファンドとインデックスファンドがあります。

インデックスファンドは株価指数への連動を目標としています。ざっくり言うと細かいことは考えずに市場全体に分散投資し、市場平均を目指そうというファンドです。一方、アクティブファンドは市場平均を超えることを目指し、様々な調査などを行いながら投資する銘柄を選定して運用しています。

アクティブファンドには市場平均を上回るものもあれば下回るものもありますが、いずれも投資にあたっての調査などに経費が掛かってしまうため、平均としてはインデックスファンドの方がアクティブファンドより運用成績がいい傾向にあります

よって、特定のアクティブファンドが市場平均を超えるという確証がない限り、インデックスファンドに投資し、世界中の株式市場へ分散投資すべきと考えます。


4.どの金融機関で運用すべきか?

個人型確定拠出年金では、①金融機関に支払う手数料と、②ファンドに支払う信託報酬の2つのコストを加入者が負担します。

個人型確定拠出年金を取り扱っている金融機関は100以上ありますが、私が調べた範囲では、SBI証券、楽天証券、野村證券、東京海上が比較的良さそうでした

この4社ならいずれもベターな選択だと思いますが、せっかくならベストな選択をしたいので、これら4社について深堀していきたいと思います。


①金融機関に支払う手数料の例

加入手数料は加入時にのみ支払う手数料です。SBI証券のみ1,080円高いですが、あとは一律です。

管理手数料は掛け金拠出期間中に毎月発生する手数料です。SBI証券や楽天証券では、運用額がそれぞれ50万円または10万円以上であれば野村証券や東京海上の半額以下になります。

事務委託先手数料は年金受け取り時に発生する手数料です。これは完全に一律ですね。

ポイントとしては定額で発生するという事です。運用額が一千万円あれば数百円の経費はリターンにほとんど影響しませんが、運用額が数十万円しかないのであれば数百円の経費は運用資産の千分の一に相当し、リターンに大きく影響します。

(出所:各社サイトより作成)


②ファンドに支払う信託報酬の例

注目すべきは東京海上セレクション・外国株式インデックスです。外国株インデックスファンドとしては私が知る限り最も低コストです。

ポイントは、運用額が大きくなればなるほど、わずかな信託報酬「率」の差が、大きな信託報酬「額」の差となることです。信託報酬0.01%の差は、50万円しか運用していなければ一年あたり50円の差でしかありませんが、1千万円運用しているのであれば、一年あたり1,000円の差となります。

なお、アクティブファンドでは信託報酬が1%を超えるものが少なくないです。運用にかかる経費で年率0.7%以上の差があるため、手数料控除後のリターンで、アクティブファンドがインデックスファンドを上回ることは至難と言えますね。。

(出所:各社サイトより作成)



③毎月68,000円、38年間拠出する場合の例 (主に自営業)

自営業の方が拠出上限いっぱいの68,000円を新卒の22歳から60歳まで拠出した場合を想定し、60歳時点の年金原資をシミュレーション(※)しました。

結果、60歳時点の年金原資(運用資産額)はSBI証券8515万円、東京海上8499万円、楽天証券8467万円、野村證券8467万円となりました。

手数料の安さと、信託報酬の安さのバランスが取れたSBI証券が最も有利、その次は信託報酬が最も安い東京海上という結果となりました。

※掛金拠出は毎月月初、各社の外国株インデックスファンドへ投資
※金融機関の手数料は管理手数料のみ考慮、毎月の拠出直後に控除
※ファンドの信託報酬は年間報酬率の1/12を毎月の拠出直後に控除
※ファンドの運用利回りは、1900年~2015年における全世界株式の実質リターン5.0%(前述)


④毎月12,000円、38年間拠出する場合の例 (主にDB年金のあるサラリーマン、公務員)

確定給付企業年金に加入しているサラリーマンや公務員が拠出上限いっぱいの12,000円を新卒の22歳から60歳まで拠出した場合を想定し、60歳時点の年金原資をシミュレーションしました。

結果、60歳時点の年金原資(運用資産額)は楽天証券1478.6万円、SBI証券1478.4万円、野村證券1452万円、東京海上1450万円となりました。

掛け金が月12,000円と小さいため、固定費である手数料が安い楽天証券とSBI証券が有利との結果になりました。